日本でもここ数年になって不健康な家族関係のというものにかなり光があてられるようになったが、家族間に巣食う病理が、30年以上も前に発表されたこの作品によって克明に描写されていたことにまず驚いた。都会に住む裕福で社会的地位の高いふたつの家族の「ウチとソト」というのがこの作品の主旨である。一見申し分ない恵まれた家庭の子が病的な潔癖症であったり、また世間体は良い家庭なのだが家の中では精神的・肉体的な暴力が蔓延していたりする。そしてそれらの家族がだんだんと、しかも決定的に壊れていく様子が大変興味深く描かれている。それと同時に、同じ家庭で育っていても健康的な精神を持つ子に成長したりする人物も登場し、読む側の「親が悪いから子が悪くなる」或いは「幼児期のトラウマにァ?りその後の精神に異常が出る」という直線的な思考を問うことも要求される。これは曽野綾子のほかの作品にも共通するが、今回も「白でも黒でもなく、灰色の現実」というものを突きつけられ、またもや考えさせられた

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